親知らずとは、正確には、第3大臼歯(智歯)といい、口の最も奥のほうで、18〜20歳頃生えてくる歯です。親知らずと名付けられた由来は、「人生50年といわれた昔は、親が亡くなってから生えてくる歯であるから」、「親もとを離れてから生えてくるから」など諸説あります。親知らずは普通、上あご、下あごの左右にそれぞれ1本ずつ、計4本あるのですが、退化傾向が著しい歯で近年、親知らずがない人も増えています。また、芽はあっても顎の骨の中に残ったままという人もいますが、生えてきた場合には、現代人は、あごが小さい人が多く親知らずの生えるスペースが少ない為、斜めに生えるなどしてしまい悪さをすることが多いのです。 |
親知らずは必ず抜かなければならないという訳ではなく、生える場所があり、上も下もまっすぐ生えていて、腫れも痛みもなく、しっかり噛む機能をはたしている場合には抜く必要はありません。当院では、歯周病などで歯が抜けてしまった部分に親知らずを移植する治療を行っていますが、万一他の歯を抜かなくてはいけなくなった場合に備えてドナー歯(移植歯)として抜かずに保存する場合もあります。しかしながら、横向きにはえてくる親知らずの場合には、非常に厄介で抜くことを検討した方がよいでしょう。例えば、隣の歯を押して不快な症状を起こすばかりでなくこれが原因で、歯並びの乱れや顎関節症を引き起こすこともあります。また、親知らずは歯ブラシでの清掃がしにくいので親知らずの周囲に炎症が起こる(智歯周囲炎)こともあります。
以上のことから、親知らずがある場合には、その親知らずが抜かなくてはいけないものなのかどうかを歯医者さんで診断を早期に受ける方がよいでしょう。誰しも歯を抜くのは嫌なものですが、智歯周囲炎を起こしてから抜く場合には、困難を要しますし、炎症を起こしている場合には麻酔も効きにくいのです。ひどい場合には、入院が必要な場合もあります。特に、妊娠中に智歯周囲炎を起こしますと、薬や麻酔を極力避けた方が望ましいですから、難しいものになります。妊娠前に一度診断を受けることをおすすめします。
ドナー歯(移植歯)として利用できる場合もありますし、抜歯時期は一概に言えないのですが、若いうちに抜いた方が、歯を抜いた後の治りが早いメリットがあります。将来悪さをすることが確実な場合には最も早い場合で16〜17歳頃抜歯を行うことがあります。この時期は親知らずの歯の根の部分が出来上がっていませんので、抜歯が容易であるためです。 |
親知らずを抜歯する際で術後起こる可能性があるもので、最も気をつけなければならないのがマヒです。これは、下あごの親知らずを抜く場合に起こりうるもので、下あごのおとがい部分を中心にマヒが生じます。これは、下あごにある神経と親知らずが近接しているため起こるものです。ただし、必ず起こるものではなく、東京医科歯科大学で報告されたものによれば、マヒの起こる割合は、1.2%と低く、神経と親知らずが離れている場合にはほとんど起こりません。尚、万一マヒが出た場合には、ビタミン剤や神経の回復を促進する薬をしばらく服用し、場合によっては鍼治療やレーザーを照射するなどの治療を行います。
参考)歯と下あごの神経とのレントゲン上の位置関係とマヒ出現の頻度
歯と下あごの神経との位置関係
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症例数
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マヒ出現数(%)
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接触なし
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189
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0(0%)
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接触
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196
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0(0%)
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重なる
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275
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8(2.9%)
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合計
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660
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8(1.2%)
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笠井歯科医院では、あごの中に埋まったような困難な親知らずの抜歯も行っておりますが、患者様の病状や状態を鑑み、抜歯後マヒを起こす可能性が高い等の場合には、(国立)東京医科歯科大学歯学部附属病院口腔外科や横浜南共済病院口腔外科などにご紹介させて頂いております